初恋タイムスリップ(成海side)
せっかく一緒に帰っているのに沈黙なんて、
つまんね−男だと思われたらどうすんだよ。
そんな事を考えている時、少し強めの風が吹いた。
するとずっと下を向いて歩いていた桜木が、
肩をすくめた。
「寒い?」
桜木が心配になって、顔を覗き込んだ。
「大丈夫」
桜木は少し震えていた。
俺は、立ち止まった。
「桜木」
そう呼ぶと、桜木は少し先で立ち止まった。
俺はゆっくりと桜木の前まで歩いて、
自分のマフラーをはずし、
桜木の首に巻き付けた。
「少しは温かくなった?」
「うん。ありがとう。
成海くんは…大丈夫?」
自分のマフラーを巻いた桜木を見て、
自分の寒さを忘れてしまった。
「大丈夫だよ」
そしてまた、
歩きだした。