初恋タイムスリップ(成海side)
どうして、泣くんだろう・・
どんな気持ちで泣いているんだろう。
ずっと泣いている美音を、
どうしていいかわからなかった。
気の利いた言葉も、みつからない。
ただ、
優しく頭を撫でてあげることしか
できなかった。
しばらく、撫でていたら、
美音が少し、落ち着いてきた。
「マフラーが・・」
美音が俺のマフラーをはずそうとした。
俺は、美音の頭から手をおろして、
マフラーをおさえた。
「いいよ。これ、持ってな。
学校にしてきなよ、
俺の彼女って証拠」
俺は、マフラーから手を離した。
マフラーは、涙で濡れていた。
「じゃあ、また明日な」
俺は、向きを変えて、
自分の家の方向へ歩き出した。
ふと、振り返ると、
小さな街灯の下に、美音がまだ立っていて
こっちを見ていた。
何度振り返っても、
まだ、美音は立っていた。
俺が角を曲がるまで、
美音は、
ずっと、立っていた。