初恋タイムスリップ(成海side)
それから、気づくとなぜか桜木を目で追っている自分がいた。
桜木が気になってしかたなかったんだ。
桜木は俺の周りによく来る女子達とは対照的で、
おとなしくて、
いつも休み時間は、自分の席に座って、
ひとりでいるか、
女バスの子と一緒にいる。
俺は、毎回、休み時間に
俺の周りに集まる女子を軽くあしらいながら、
窓際の桜木を、横目で時々見ていた。
ある日の放課後、
陸部の練習の合間に、
俺は、思い切って篤志に桜木のことを聞いてみた。
「なあ・・篤志。桜木ってどう思う?」
篤志は、はあ?という顔をして
「さくらぎ?誰だそれ?」
そう言った。
「小さくてさ、おとなしくて・・窓際の席の・・
ほら、よく女バスの女と一緒にいる・・」
ああ、ああ、と篤志はうなづいた。
「あいつか。わかったわかった。
暗~い女な。
ちっこい。
あの女がなんだよ。なんかあったか?
まさか・・・告られたとか?」
「そんなんじゃねーよ」
篤志は、ストレッチしながら、あははっと笑った。
「成海もモテるよな~。
前野も成海のこと狙ってんのバレバレじゃん。
あ〜でも俺だったら前野はパスだな。
前野って性格きつそうだから。
窓際のちっこい女の方がまだマシだな。暗そうだけど」
そう言い捨てて、
篤志は、スタートラインに立った。