True Love(仮)
「あ、あかり。一条あかり!」
「ん、あかりちゃんね。
俺のことは名前で呼んで!
あと、メアド教えて?」
私は翔先輩の微笑みに見入ってしまい、操り人形みたいに素直にケータイを差し出していた。
「登録完了。
また会おうね、泣き虫あかりちゃん。」
そう言い、私のおでこにキスをして、どこかへ行ってしまった。
…って、えー!!!
今日知り合ったばかりの先輩。
不意打ちなキスとアドレスを残していった翔先輩。
…嵐のような人だな。
てか、会ったばかりなのにキスって、そんなのアリですか!?
「あかりー!!」
「あ、アヤ!」
もう…アヤ遅いよ。
あんな嵐のような事があったのに、どこで油売ってたんだか。
「あかり、ふて腐れないの。
すぐ顔に出るんだから。
お詫びにほら、クレープ!」
飲み物を買いに行ったアヤ。
遅くなったお詫びとして、私の大好物のクレープ買ってきてくれた!!
チョコシロップと生クリームたっぷりで、中には、バナナとイチゴが入ってる。
「無理言って作ってもらったんだから、ちゃんと味わって食べな。
って、聞いてないな。」
んふふ♪
甘いもの好きだけど、クレープが1番好き!!
「…本当に単純。
ご機嫌は直りましたか、お姫様?」
「はーい!!!」
「ったく。てかそんなに甘いもの好きなのに、太らないとか羨ましいわ。」
「太るよぉ? 運動ちゃんとしてるだーけっ」
ボリュームたっぷりなクレープを食べ終わったころには、今日起こった出来事なんかどうでも良くなっていた。
これが私の好きな人、桐谷翔との出会い。
お化け屋敷のせいで泣いていた私を慰めて、嵐のように去っていった人。
モデルのようなルックス。
軽く遊ばせていた黒い髪。
優しく落ち着く手と声。
あなたはどうして、会ったばかりに私にキスをしたのですか…?