短篇
遠くへ行こうか、近場でやり過ごすか。


電車の線路図とにらめっこしながら考える、夜の十時。


残り、あと二時間。
ここまで来るのに、太陽の姿を五回は見たと思う。


結局、私は太陽の考えついたゲームに参加することになった。

だって、勝てばあの店のコーヒーを一生タダにしてくれるというのだ。

無類のコーヒー好きの私にはおいしいゲーム。


――勝てばの話だけど。



ルールは簡単。
日付が変わるまで、つまり十二時まで、太陽に捕まらなければ私の勝ち。コーヒーはタダ。

でも、もしそれまでに捕まってしまったら太陽の勝ち。


太陽の願いをきかなきゃいけない。

はたして、コーヒー代一生タダと、太陽の願いが同等の価値になるのかは分からないけど、受けてしまった以上は勝たなければ。



大丈夫。
範囲は自由。

逃げるならどこへでも行ける。
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