万年樹の旅人
四章

 星が瞬きをしているようだ、とユナは思った。

 短い梯子を上りきり、平らな屋根に上がるとそこは小さな菜園だ。日々の生活に最低限必要とされる野菜などは、全てここから採っている。時おり山の中に入り山菜や木の実をラムザ爺さんと採りに行くこともあるが、ほとんどがこの菜園、そして家畜の乳や肉で賄っていた。また、数件しかない民家の者同士も非常に親睦が深く、辺り一面に広がる農場や果実園から、少しだけ分けて貰えることもある。ユナは放牧されている羊のぽてぽてと歩く姿が好きだ。だから羊の肉を食べるのは好きではない。だが、果実園いっぱいに生った林檎や葡萄を絞った飲み物や、漬けて甘くなった果実は、ラムザ爺さんが捏ねて焼いたパンと同じくらい好きだった。

 先日ラムザ爺さんと野菜を採取したばかりの小さな菜園は緑一色に染まっている。ユナはその中で、草をかきわけて仰向けに寝そべるのが好きだった。夜眠れない日は決まってここへ来る。

 そして目が冴えてしまうほどの濃紺の空に浮かぶ星を眺めるのが、とても好きだ。茫洋とした夜空で静かに瞬く様子を見ていると、自分が抱え込んでいるものが、いかに小さなものなのかと思い知らされる。

 こんなに広く、たくさんの星があり、もしかしたら自分は見てもらえないのではないか、なんて悩みはきっと星にはないのだろう。そうでなければ、あんなに輝いてなんていられない。
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