万年樹の旅人
明日は学舎に行く日だ。そう思い出し、胸の奥に血が広がるような気持ちになった。
自分から望んで通うようになった学舎。だが、学ぶ楽しさよりも与えられる痛みのほうが最近では大きく感じる。
学舎は義務ではない。ユナの家のように、裕福ではない家庭の子供は行かないまま成人することのほうが多い。それでも学舎に行きたい、と思ったのは、ラムザ爺さんが昔教師をしていたと聞いたから。また、ラムザ爺さんの話を聞いているうちに、もっと色々知りたいと思ったから。それを悟ったラムザ爺さんから、学舎に行かないかと訊ねられたとき迷うことなく頷いたのだった。
そう、裕福ではない。本来ならば学舎に行ける余裕なんてないはずなのに。
ラムザ爺さんが働いていたこともあり、多少の免除はあるものの、それでも生活が厳しいのはわかる。現に、学舎に行きだす前の朝食には決まってパンと果実は必ず食卓に並んだ。今では乳のスープのみ。週に三度の学舎へ行く日だけ、パンが出る。それくらい、切り詰めなくてはいけないのだ。なのに、行きたくないと思ってしまう自分がいる。学ぶことは楽しい。知らない知識を増やしていくことに、喜びも感じる。だが、それ以上に周りの目線が怖いのだ。周りの生徒のほとんどは貴族で、着るものひとつとっても違う。最初はそれでからかわれたのだ。
(早く寝ないと……また明日も居眠りしちゃう)