万年樹の旅人
白い肌によく映え、光のように眩い金の髪にも劣らない存在感を放つそれは、真っ赤な薔薇の花を模した小さな髪飾りだった。花の中心部分に小さな石がいくつも散りばめられ、光にあてると水遣りのあとの水滴のような輝きを見せた。
無意識のうちに、ルーンに似合うもの、と見定めていた自分に驚いた。伸ばしかけていた手を慌てて引っ込め、店を去ろうと背を向けたときだった。店主の女がジェスに声をかけた。
「それは最近、若い女たちに人気があるんだよ」
思わず振り向いて、女店主を見た。人好きのする笑顔で、ふっくらとした体格がまた、親しみを覚えた。
「贈り物かい?」
「いや、あの――」
「綺麗に包んであげるよ。どんな女性かい? リボンはピンクがいいかねえ」
ジェスが頷く前から、カウンターの下に頭を突っ込み、あれよあれよといううちにたくさんの包装紙や飾り紐が並べられた。ピンクの他にも赤や白、金色などもあり、細さ長さもまちまちだった。どれがいいかい、と尋ねる女主人の笑顔は、穏やかではあるものの、客を取り逃がさないように必死であるのが伺えた。
そうして、諦めのため息をついてジェスが選んだのは、髪留めと同じ赤い色だった。