万年樹の旅人

「髪飾りだわ……」

 感情の窺えないぼんやりした声で洩らす。

「ルーン王女によくお似合いだと思いますよ」

 リュウが笑顔で言うと、ルーンもそうかしら、とジェスとリュウを交互に見た。

「どうしてわたしに?」

 期待を込めた瞳で、ルーンはジェスを見上げた。

「いや、だから店の者に無理矢理……」

 思わず視線をそらしたジェスを追いかけるように、ルーンは更に言葉を続けた。


「ねえ、どうしてこの色を選んだの?」
「いえ、別に……」


 まさかルーンに似合うと思って、などとは口にできず適当に誤魔化すと、リュウが笑いながら言った。


「お前が一生懸命選んでる姿がなんとなく想像つくな」

「そうなの? ねえ、ジェス、わたしために選んでくれたの?」

「いや、だから、その――」


 そしてそれは忽然と沸き起こった。ゆっくりと流れていた空気が途端、張り詰め途切れる。辺りにはどよめきに満ちていた。
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