万年樹の旅人
確かになぜ自分が招かれたのかはわからない。不審だとも思う。しかしそれを言って軽く断れる相手ではないのも確かなのだ。行けといわれれば行く、退けといわれれば退くことしか許されない相手なのだ。
「それでは楽しみにしているよ」
アズが背を向け一歩を踏み出そうとした刹那、再び振り返る。強い、射るような視線はルーンにのみ注がれていた。
「――君はどうしてここに来たがるのかな。王族にとって、万年樹は災いにしかならないことをしっかりと覚えておくんだね」
そう言い残して去っていったアズの後ろ姿を、ルーンはただ無言で怒りとも悲しみともとれる表情で見つめていた。