万年樹の旅人

「ルーンさま」

 ユナの声に、ルーンは嗚咽を洩らしながら両手で涙を拭い、真正面にいるユナと視線を合わせた。

「ここは、どこですか?」

 一瞬にして、ルーンの泣き声がやんだ。間の抜けた表情で、ユナを見つめる瞳は赤く腫れあがっている。

「ラナトゥーンよ……。わたしが全部壊してしまったから、今は万年樹しかないけど……。どうして?」

「ルーンさまはずっとここにいたいの?」

 わずかな間を置いたあと、ルーンが首を横に振った。
 赤くなった目に、再び涙が滲んだ。

「だって、ジェスはもういないもの! やっと見つけたあなたはこんなにも違う……会いたいのよ、ジェスに会いたいの!」

「じゃあ、もうここにいる必要ないんですよね? だったらもう僕と一緒に帰りませんか?」

「え……」

「そうしたら、今度は僕がルーンさまを見つけてみせる。ルーンさまが僕を見つけてくれたように。そうしたら、そのときは一緒にお話してくれますか?」


 照れくさそうに笑いながら言ったユナを見て、ルーンは再び声を上げて泣いた。

 時おり声を詰まらせながら必死に頷いた。

 大粒の涙が陽光に反射し、珠のような輝きにユナは目を細めた。
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