万年樹の旅人

(ああ、そうなんだ)

 ラムザ爺さんが歌ってくれると決まって懐かしい気持ちになるのは、以前ジェスがルーンから歌を聴いていたのかもしれない。だから初めて聴いたような気がしなかったのだ、とユナはこのとき初めて納得した。

 ルーンは、ユナがジェスの魂を持った生まれ変わりだと言った。確かに、ユナは何度も自分がジェスとして生きていた夢の中の自分も知っている。けれど、こうしてユナとしての本体を取り戻してしまえば、彼は自分とは全く違うものだとわかる。ジェスを思って懐かしさを抱くのは、昔の自分を思い出し感じるものとは違った。歳も姿も性格も、なにもかもが違うというのに、なぜだかラムザ爺さんを思い出すのだ。

 自分の父でもあり、一番の理解者でもある親友のように思えるときもある。ジェスは、ユナにとって、今は父親のような存在だった。

 そうだとしたら、ルーンはお母さんかもしれない。母という存在が、どういうものなのかわからないけれど、このように温かい気持ちになれるものが母なのだとしたら、間違いなくルーンは母だ。
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