卒業

初めての出会い

 その男子の名前は正樹。背は真ん中くらいでクラスの中でもあんまり目立たなかった。でも、小学生なのにちょっと低めのハスキーボイスと図書室で窓辺に座って時々本を読む姿は、外で汗だくになって走り回る男子よりも私には魅力的に見えた。


 正樹は勉強は出来たがあんまり人とは話さなかった。
でも何故か、「クール」って言葉を覚えたての女の子達には一目置かれ、存在感はあった。


 彼は転校生だった。


 キーンコーンカーンコーン♪
朝礼の時間。担任の先生が一人のメガネをかけた男の子を連れて教室に入ってきた。
もちろん教室中の目はその見知らぬ男の子に集まる。小4の春。それが私と彼との初めての出会いだった。


 少女マンガ好きの私は「転校生」=「何かの始まり」と思ってたから、彼が自分の隣の席になって・・・どっちかが教科書を忘れて・・・目があって・・・と、よくありがちな妄想と期待で胸を膨らませていた。彼はまさか私がそんなことを想いながらいたなんて想像もしなかっただろう。
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