恋想曲 ~永遠の恋人へ~
遼ちゃんと手をつないで歩く帰り道、青かった空がオレンジ色に染まってた。

ふわりと浮かぶ二つの雲が風に流されている。


風さん、二つの雲が離れないようにゆっくり吹いてあげて…。


なんだか小さい方の雲が、大きい雲に必死に付いていこうとしてるみたいで、私に見えた。




「明日、寝坊するなよ」


「遼ちゃんこそ寝坊しないようにね」



家に着いたのに、遼ちゃんの手を離したくない私の手。


今にも遼ちゃんの手が離れちゃうんじゃないかっていやだった。


私の気持ちが手から伝わるのか、遼ちゃんも手を離さない。



「明日のコンクール、絶対優勝して全国に連れて行くからな」


「うん。私、応援してるからね」



突然風がいたずらのようにふわっと舞い上がり、私は驚いて目を閉じた。


目を開けると、遼ちゃんの優しい眼差しが近づいてくる。





一つに重なった大きな雲が太陽を隠してくれた瞬間


私達は優しいキスをした。





遼ちゃんの前髪が、私の鼻をくすぐりながら赤茶色に輝きだす。



唇が離れそっと瞳を開くと、薄っすらと開けた遼ちゃんの黒い瞳が私を見ていた。




遼ちゃんの瞳の中の私…


すごくドキドキしてるよ。




好き。


好きだよ、遼ちゃん…。






キスの余韻が覚めないうちに遼ちゃんを見送った。



もう、怖くないよ。

遼ちゃんの背中に手を振っても、心がここにある。




角を曲がる時に振り返った遼ちゃんの微笑みに、

もう一度手を振った。








< 133 / 326 >

この作品をシェア

pagetop