恋想曲 ~永遠の恋人へ~
林先生が居なくなってからの音楽室は、誰もいないような静けさだった。


時計の針だけが、変わらず動き続けてる。


ゆっくり…ゆっくりと……


だけど、昨日より遅く感じているのは私だけじゃなかった。



「連絡来ないな‥」

不安がイラつきに変わり始めた斎藤先輩の声が聞こえた。



気づかないうちに、快晴だった空には大きな黒い雲が覆っていて

窓を打つ強い雨音が、そのことを私たちに知らせてくれた。



砂山先生が慌てて窓を閉めて、電気をつけようとした時、

遼ちゃんの声が聞こえた。



「練習しよう」

遼ちゃんの突然の言葉にみんな驚いた。


同時に一年生の女の子が泣きながら叫んだ。


「小川先輩酷いです!部長がこんな時に‥どうして練習なんて出来るんですか!?」


「そうですよ。みんなで連絡待ちましょう!」

泣いてる一年生の肩を抱きながら、種田先輩が遼ちゃんに言った。


「けど、もう準備しなきゃ間に合わなくなるよ!」

「嶌田部長を思ったらコンクールなんかに出れないよ!」

「三年生にとって最後のコンクールだよ!?」


泣き声と様々な意見がぶつかり合い、みんなの声で雨の音が掻き消された。


そんな中、突然斎藤先輩が机を蹴り上げ、みんなは大きな音に驚き静まり返った。


「どうせコンクールに出たってこんなんじゃ良い結果出せねえし、俺…演奏したくない」


吐き捨てるように言った斎藤先輩の声は、少し震えていた。



その言葉は、斎藤先輩の最大の強がりに思えた。



信汰が言ってたんだ。


斎藤先輩の譜面はいつも青色だって。

先生に注意されたことを忘れないように、一つ残らず書き記してるんだって。



斎藤先輩は、青い譜面を力いっぱい握りしめていた。





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