恋想曲 ~永遠の恋人へ~
外にバスが止まったことに気づき、時計が八時半を回ってることに気づいた。


「おまえたちは先に楽器を積み込んでいてくれ。
先生は職員室でやることやってから行くから」


砂山先生は大きく深呼吸をした後、みんなの顔を見渡してから職員室へ向かった。


私達は遅れた時間を取り戻そうと、掛け声をかけながら流れ作業で楽器を外に出した。



外に運び出した楽器をバスに移動している途中、また雨が降り始めた。


「急いで!楽器が濡れちゃう」

太田先輩の声でみんなの動きがさらに速くなった。


小さな楽器は制服の中に入れて運んだり、パーカッションは自分が着ていた学ランをかぶせて運んだり…

みんな楽器を守ることに必死だった。



楽器がもうすぐ積み終わるという時に、山崎先輩が学校に走りだした。

「僕、砂山先生の加勢に行ってきます!!」



その言葉で、私達は職員室の窓を見た。



職員室の中では、砂山先生が何度も校長先生に頭を下げている。


校長先生は、この事態でコンクールに出ることを拒んでいるんだ。

そのことが一目でわかった。



それでも何度も頭を下げてる砂山先生。


本当は校長先生には頭を下げたくないはずなのに…。


校長先生は砂山先生を野球部から外した張本人。


だけど、砂山先生は必至な顔で校長先生に許可をくれるよう頭を下げ続けていた。



私達は雨に打たれながら熱い思いで砂山先生を見ていた。


いつもやる気がなくて、いてもいなくてもいいと思っていた砂山先生が、あんなに一生懸命頭を下げてくれている。


指揮を断ればこんな思いをしなくて済んだのに、私達のために必死になってくれている。



私達は、職員室に向かって頭を下げた。


職員室にいる校長先生‥ううん、砂山先生に…。







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