恋想曲 ~永遠の恋人へ~
ホールに入ると既にコンクールは始まっていて、ホール全体に緊張感が溢れてた。

私達は静かに席に着き、他の高校の演奏を聴いた。


コンクールの演奏を聴くのは初めてだった。

普段の演奏会とは違って、楽しむとはほど遠い演奏がプログラム順に制限時間付きで進められていく。

中央の席には硬い表情をした五人の審査員が座っていた。


こんな張りつめた空気の中で演奏するなんて、コンクールってやっぱり凄い。

凄い以外の言葉でどう表現すればいいのかわからないけど、とにかく緊張感の塊の中で演奏する高校生の姿が、同じ高校生とは思えなかった。


先輩たちもこのステージで演奏するんだよね…。

改めてみんなの勇気がとてつもなく大きいものだと感じた。



今頃先輩たちチューニングしてる頃かな…。

慌ててたから忘れ物とかしてないかな…。


いろんなことが頭に浮かんでパンクしそうになる。



大丈夫…大丈夫だよね。





何を考えてるかわからなくなっていくうちに、桜丘高校の出番のひとつ前の高校の演奏が始まった。

見覚えのある緑色の制服を着た西山高校だった。


夏祭りを辞退してまでコンクール一筋に練習してきた西山高校の演奏は、他校の生徒が溜息をつくほど素晴らしかった。


私達は、黙ってその演奏を聴いていた。


遼ちゃん達はステージ裏で、どんな思いでこの演奏を聴いてるんだろう…。

緊張が更に増してるかもしれない。


だけど、夏祭りに参加したことを後悔してる人はきっといないだろうな。



だって、うちのブラバンは楽しむことが好きな人の集まりだから…。





演奏の途中、私は何故か後ろが気になってホールの後方を見上げると、

出口の階段に居るはずがないと思っていた姿があった。


お姉ちゃん!?

雨に濡れた髪を拭かないまま立っているお姉ちゃんがいる。



お姉ちゃんは私に全く気づかず、私は脅かさないようにそっと声をかけた。




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