恋想曲 ~永遠の恋人へ~
演奏が始まると同時に、体中の毛が逆立った。



今まで味わったことのない感覚が、頭のてっぺんから足の爪先まで走る。




どうすればこんな力強い音を響かせられるんだろう…。



胸が張り裂けそうなくらい音たちが響き渡る。



真っ直ぐに向かってくる音色が不安をどこかに吹き飛ばしてくれる。





他校の生徒は溜め息をする間がないほど演奏に聴き入っていた。




会場全体が敵でも味方でもなく、



ただ目の前の演奏に感動していた。





必死にタクトをふる砂山先生はどんな顔をしてるんだろう。


客席の様子を知ったら、きっとあがり症なんて治っちゃうだろうな。



先生の背中が眩しいほどライトを浴び、かっこよく見えた。




先輩達は先生の指揮から一瞬たりとも目を離さず力いっぱい演奏している。



これまでの練習風景が甦り、涙が溢れだした。





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