恋想曲 ~永遠の恋人へ~
静かだったバスの中は


みんなの泣き声と、叫び声と、鼻をかむ音と、




嶌田部長への思いでいっぱいになっていた。





どんなに厳しい評価をされても涙一つこぼさなかったみんな。



だけど嶌田部長の安否がみんなの涙腺を壊してしまった。





涙が止まらないよ…。


きっと麻衣子もお姉ちゃんも同じ思いをしているに違いない。


そう思うと余計に涙が溢れた。




「遼ちゃん…よかったね、嶌田部長のお見舞いに行かなきゃね…」


遼ちゃんの手を握り締めた。


「ああ…そうだな…」




遼ちゃんの痛いくらいに冷たい手が、どれだけ不安を押し殺していたかを物語っているようだった。



微笑む遼ちゃんの瞳からはいくつもの涙が溢れてる。





初めて見た遼ちゃんの涙は



笑顔の頬に流れる綺麗な雫だった。






まるで雨上がりのバスが流す

雨の雫のように…。








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