恋想曲 ~永遠の恋人へ~
音楽室を出る時、遼ちゃんが持って帰ると言ってたトランペットを元の棚に戻した。


「置いてくの?」

「こいつ、俺と家に帰るより仲間に囲まれてたいだろうから」



トランペットを『こいつ』って言う遼ちゃんは、とても優しい眼差しでトランペットの入ったケースを見ていた。



本当に好きなんだね。

このトランペットが女の子だったら、私やきもち焼いちゃうよ。






家まで送ってくれた遼ちゃんは、シッポを振って飛び跳ねるサブローの体を撫でまわした。


「久しぶりだなー。元気だったか?北島サブロー」

「フルネームで呼ばないでよ」


北島三郎ファンのお父さんが、みんなの反対を押し切ってつけたサブローの名前。

今ではみんな気に入ってるけど、フルネームで呼ばれるとやっぱりちょっと恥ずかしい。


「おまえは気に入ってる名前だろ?なぁ?北島サブロー」

「も~遼ちゃんのいじわる!」


遼ちゃんはいたずらっぽく笑って見せる。


その笑顔がたまらなく好きな私。

だからどんな意地悪も許せちゃうし、嬉しく思えちゃうんだ。
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