恋想曲 ~永遠の恋人へ~
一番いやな時間が始まった。

神崎先生の授業。



私はずっと机の上の教科書を見ていた。


それでも神崎先生の鋭い視線が刺さってくるのがわかる。



強気で先生を見返したかったけど、

どうしても先生の顔が見たくなかった。




「北島さん、さっきから下を向いてるけど、私の授業つまらない?」


突然、神崎先生が教壇の上から言った。


クラスの全員がいっせいに私を見る。




「いえ、そんなことありません」


「じゃあ、この問題解いてみて」



黒板に書かれた問題を解くよう前によばれた。



黒板の前に立った私は、目の前の問題が全くわからなかった。



「すみません、わからないです…」


「そう…。私の教え方が悪いのかしら‥簡単な問題なのに」




後ろからクスクスと笑い声が聞こえてきた。


神崎先生は私が席に着くまでの間に、その問題をみんなに解いてみせた。




「先生、私もわからなかったです」


いつも穏やかな麻衣子がきつい口調で言った。



「あら、嶌田さんまで?じゃあ本当に私の教え方が悪いのね」


「せんせーは悪くないよ!俺わかったもん」


和田君が神崎先生のかたを持つように叫んだ。



「ありがとう。先生みんなにわかってもらえるように頑張るね」


そう言った後、神崎先生は私ににっこりと微笑んだ。






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