恋想曲 ~永遠の恋人へ~
家の中では、お母さんとおばあちゃんが夕食のハンバーグを作ってた。

「うわぁ、いい匂い」

「もうすぐ出来るから着替えらっしゃい」



着替えてくると、白い食卓にハンバーグが5つ並んでた。

お姉ちゃんとお父さんの分にはラップがかけられてる。

ハンバーグが大好きなお父さんのお皿には、私の2個分くらい大きいハンバーグが乗せられていて

お母さんの愛情が目に映る。



お父さんとお母さんを見てて思うんだ。


夫婦って不思議。


好きとか愛してるって言ってる所を見たことがないのに

愛し合ってるのがわかる。


相手を想う気持ちが自然と伝わってる。


他愛のない会話で見せる笑顔とか、

ソファで寝ちゃったお父さんを起こすお母さんの優しい手とか…。


こんなこと恥ずかしくて言えないけど、

将来、お父さんとお母さんみたいになりたいって思う。




「部活はどうだったの?」

「楽しかったよ」

「そう…」

お母さんがサラダを皿にとりながら、不思議そうに私を見た。


「なに?」

「朝の葵の方が元気だったから…。
あんなに楽しみにしてたから、もっとはしゃいで帰って来ると思ってたのよ」


肩をすくめてちょっと心配してるお母さんに楽しんできたよって言おうとすると・・

「年頃の娘には色々あるんだよ」

私が答える前に、おばあちゃんが言った。


そして私に…ウインクした。

今の…両目瞑っちゃってるけどウインクだよね!?



お茶をずずっと飲み干して、部屋に戻るおばあちゃん。


私とお母さんは、そんなおばあちゃんの背中をずっと見ていた。


あんなおちゃめなおばあちゃんを見たのは初めて‥。


「なんだか今のおばあちゃん、かわいかったわね」

普段、小言をしょっちゅう言い合うおばあちゃんのことを、

お母さんが嬉しそうに『かわいい』って言った。


そんなお母さんを見て、私も嬉しくなった。










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