恋想曲 ~永遠の恋人へ~
「おばあちゃんね、とても好きな人がいたの。
その人のことが好きで好きで、若い頃のおばあちゃんはその人しか見えてなかった」



おばあちゃんのその言葉を聞くだけで

胸がキュンってなった。


おばあちゃんて、本当におじいちゃんのことが好きだったんだね…。




「その人はね、玄さんっていう名前だった」


え!?玄さん!?

おじいちゃんの名前は万作だよ!?



おばあちゃんは、私が驚いてることにも気づかないまま話を続けた。


「戦時中、おばあちゃんは親同士が決めた人と結婚することが決まってたんだけど、
どうしても玄さんのことが諦めきれなかった‥


玄さんも、おばあちゃんのことを好いてくれてね‥二人で逃げたの。

そして‥身も心も一つにしたの…」



頬がほんのりとピンク色に染まったおばあちゃんの瞳の奥には、玄さんがいるようだった。



「だけど、私達の恋を反対したのは親だけじゃなかった。

玄さんに国から戦場に行く命令の赤紙が届いたの…。

そして…玄さんは帰って来なかった…」




おばあちゃんの悲しそうな声が、


私の胸を締め付けた。




「もう帰らない玄さんを待ち続けるおばあちゃんのお腹にはね、玄さんとの子どもがいたの。

だけど、おばあちゃんは何も食べることができなかった。ううん…玄さんのところにいきたかったのよ…。」








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