恋想曲 ~永遠の恋人へ~
遼ちゃんから受け取ったハンカチで、ゆっくりチョコレートを拭き取った。

だけど、やっぱり胸元で染みになっっちゃった。



「クリーニングでとれるかなぁ」


「さぁ‥。とれなくても思い出になっていいんじゃない?」


「やだよ!」



笑いながら言った遼ちゃんの言葉を跳ね返した。



だけど、本当はそれもそうだなって思った。


遼ちゃんとの思い出は、どんな形でも残したい。







遼ちゃんがおでんを食べ終わる頃、知らない人たちが声をかけてきた。


「あっれー、遼なにやってるの?その子は?」


茶髪にピアスをつけた女の人が、遼ちゃんの肩に触って私を指さした。


「北島の妹。今日ブラバンで来た帰りにちょっと寄っただけ」


「あ、そうなんだ。妹さんかわいいね。なんだか兄妹みたい」


「こんな妹いらねえよ」




親しげに話してる遼ちゃんと女の人たちが、いやでも目の中に入ってくる。



痛い。

鋭いとげが刺さったみたいに胸が痛い。


だけど笑ってる自分がいる。


ちゃんと笑えてるかわからないけど、精一杯笑ってみせた。



そうだよね、チョコレートをたらしちゃったり擦り傷があったり…

世話のかかる妹にしか見えないよね。



遼ちゃんの周りには、浴衣なんか着なくても大人っぽくて綺麗な人がこんなにいるのに…


少しでも特別に思ってくれてるんじゃないかって思った自分が恥ずかしい。




恥ずかしくて…

恥ずかしくて…



泣きたくなる。












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