君と俺の事情


「俺さ、他人なんだ」

「え?」


あたしの話しをしたら、長瀬も俺自身の話しもすると言い出した。
確かに話しを聞いてると、あたし達は共通点がいくつかある。


「俺は親に捨てられたんだ」

「捨てられた?」

「長瀬の養子。結未姉ちゃん達とは、血が繋がってない」


あたしは初めて見た。
長瀬が、とても深刻そうな顔をしてるのを。
それだけ、深刻なんだろうけど。

他人が自分だから、何かあったら俺が出てけばいい。
と長瀬は言う。


「折角、家族にしてもらったんだ。だから、俺が家族を壊したくない」


長瀬がそう言うと、あたしは自然と涙が出た。


「…なんで、なんで泣くんだよ!」

「長瀬は、1人で頑張ってるのに、あたしは何からも逃げてる!それが…凄く情けないって…!!」


長瀬は自分が養子であることを、拾われたときから自覚。
その現実を知りながらも、家族になった人達と生活してる。
自分が迷惑かけないように、自分なりに頑張ってる。
それなのに、あたしは全てから逃げてる。
逃れようとしてる。
それが、どうしても情けない。
< 24 / 73 >

この作品をシェア

pagetop