君と俺の事情
「あ、時間だわ。ゴメン、行くわ。話しに付き合ってくれてありがと」
「ま、待って!」
俺が振り向くと、紗夜はおまじないをしてあげると言い出した。
緊張が解れるなら。
そう思って、俺はじっと止まった。
「真ん中陣取って、応援するからね」
「おう♪頑張るぜ!」
「じゃ、目つぶって?」
黙って目をつぶった。
数秒後、柔らかい感触が口にした。
―チュ
「頑張って」
目を丸く開いたときにはもう、紗夜の姿はなかった。
今…あいつ…俺にキス…した…?
え…マジか。
俺は立ち尽くし、考えた。
あいつがキスした意味を。
ホントにおまじないなのか、それとも、あいつ…俺のこと好きなのかって。