君と俺の事情
「ん…」
「目、覚めた?」
起き上がると、長瀬が寄って来た。
ここ…長瀬の部屋じゃん。
あたし、なんでここに…。
「襲われてたこと、忘れてんの?」
「あ、あーあ。ありがと、助けてくれて」
「べつに。あ、これ」
長瀬があたしに差し出したのは、お守りとして大事に持ち歩いてる、あのガラス玉。
「落ちてたよ」
「…あ、ありがと…」
壁にぶつかったときに、落としたのかも!
よかったぁ…。
なくさなくて。
沈黙が続いてると、長瀬があたしに聞いてくる。
あんときのキスした訳を。
おまじないにしては、確かにやり過ぎだけどさ。
言えないよ。
ホントの理由なんて。
言えない。
まだ言いたくない。
「言えないよ」
「そう。無理して言えとは言わないよ」
「ゴメン。あたし、帰るよ」
なんか、長瀬の家に2時間くらい邪魔しちゃってるし。
ちょっと帰りたい気分だし。
あたしは荷物を持って、部屋を出ようとした。
そしたら、長瀬はふと言う。
「まだ、忘れてないんだね」
「え?何を」
「その、ガラス玉だよ。俺にもくれたじゃない」
「…長瀬、あんた…」