君と俺の事情


紗夜side


部屋に戻って、荷物を投げた。
辛い。
何が辛いかって?
長瀬集がだよ。
あの子の存在が辛い。
あの子、あたしの気持ちわかってないじゃん。
あたしの気も知らないで、あんなに優しくして。
なんなんだよ…長瀬集…。
どうして。
わけわかんない。


「好きって、言えたらいいのに」


ホントに言いたい。
だけど、タイミングがないし。
第一、長瀬はお姉さん好きなシスコンじゃん。
絶対振られる。
絶対まずいな。



集side


「遊我兄ちゃん…?」


俺は家に帰るなり、直ぐさま遊我兄ちゃんに会いに行った。
結未姉ちゃんにばれないように。
結未姉ちゃんにばれたら、話し出来なくなるらさ。


「どうした?」

「話しがあるんだけど…いい?」


ベッドに座っていた遊我兄ちゃん。
俺は向かい側に座った。


「真剣な顔してなんだよ。まさか、結未に襲われたか?」

「いや、あのさ、女子を無意識に気にかけたり、寝顔とか見てドキッとするのって、なんか意味あんの?」

「…お前…」

「な、何…」

「それは、恋心っつーんだよ。まさかの、あの女の子に!?」

「あ〜う、ん」

「ありゃ…結未が怒るぞ…」
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