烏城の陽
ファーストコンタクト
 「 文化祭」というのは縁がないものにとっては非常につまらないものである。

 学校という規模で「私たちは今凄く楽しんでいますよ~!!」と雰囲気を盛り上げていれば外面は賑やかなイメージで保たれるものの、そんなナヨナヨのハリボテ願望が内面に潜むガチガチのKY野郎まで駆除することは絶対に叶わぬ幻想である。

 2年半前までその頑固者の一人であった私が言うのだから間違いはない。

 ではどうして私がそんなポジションにつくことになってしまったのか?それを語るには私の高校入学時まで遡らなければならない。

 とは言っても、私だって最初から高校での青春謳歌を否定していたわけではなく、むしろありとあらゆるライトノベル・アニメ等の作品から受けた影響によって、「勉学に勤しみ、部活動に燃える」というような典型的なスタイルに憧れを抱いていた。

 中背でやや痩せ型、眼鏡を掛けているが奥に潜む眼差しは穏やかで、髪は少しばかり長め。運動は苦手だが、折り紙は得意というような極一般的なステータスも兼ね備えていたので私自身には何の問題もない。

「ではどうしたら道を踏み外すのか?」 誤解である。大それた勘違いである。

 私は決して自ら道を逸れるような行いはしなかった。高校初の自己紹介も見事に決めた。入学直後の実力確認テストも華麗にくぐり抜けた。騒々しい応援団の強制応援歌練習・団員勧誘にも堂々と挑み、耐え抜いた。実に素晴らしいデビューを飾ったのである!

「ではお前に一体何が起きたのだ!?」

酷な待遇であった………………欠席である!ウイルスである、インフルエンザである!

 決して油断していたわけではなかった。その年ただでさえ長い長野の冬が恐ろしいウイルスをぶら下げて平年以上に長居していたことは朝の地方ニュースでも度々目にはしていたのだ。

 寝込みに寝込み、うんうんと苦しみ、学校に戻れば既に勉学についてゆけず……

 かくして私は入学から一月立っていない間に一週間分の授業を切り落とし、意欲を失い、ついでに「部活動見学期間」というワケがわからんキャンペーンを完全に素通りするという悪夢的快挙を成し遂げた、英雄に昇格したのである。

 そんな過去が、私の高校三年間を暇人として過ごし、テコを使っても動かない頑固者とレッテルを貼られる(後々称号は増えるが)土台をものの見事に形成したことは知る者ぞ知る雑学なのだ。





 
 






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