烏城の陽
 硬く握手を交わし終えると、彼は満足げに笑った。が、私が左手にぶら下げているPSPを発見するや否や、苦悶の表情を浮かべた。

「祭りにも参加せず、何をしているかと思えばゲームか。しかも美少女恋愛物とお見受けするが?」

 私はムッとした。こいつには紳士的対度の欠片も感じられなかった。

「いきなり馴れ馴れしいな。初対面の人間に対する礼儀は親から学ばなかったのか?」
「生憎うちは商売の家系でな。一期一会で金を店に落とさせるのが第一だ」

 遠藤はさらに言葉を繋げる。

「それより西口、その液晶に映る麗しの美少女に対してお前が抱く感情もしくはそれについての言い訳を俺は聞きたい」
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