烏城の陽
 ステージ会場に入った瞬間に遠藤は入口付近で「ここで待っていろ」と私に指示を出したっきり姿を群がる人混みに消していた。

 一人取り残された私はどうすれば良いのだろう。誰も私を構う気など無いようで、孤独を感じざるを得ない。あとここに三十分も居れば塩をかけられたナメクジの様に私の存在は少しずつ小さくなり、終いには消えてしまうにちがいない。

 相変わらずステージでは音楽が鳴り止まない。そのはずなのに何処か曲は遠くで演奏されているように聞こえる。

 ああ、私の最後も近いようだ。悟ったところで話しかける犬がいないのでこれも寂しいものである。

 ……ん?どういうことだ、天使も来ない!働かない神の使いとは何事だ!





「……おい、大丈夫か?」

 遠藤は眼鏡をかけた男を後ろに連れて戻ってきた。


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