烏城の陽
 …………くだらない。実にくだらない。

 どの団体にも所属していないという理由で永遠教室待機を許されていた私は、春先のモンシロチョウの如く祭りの香りに舞い上がっている阿呆な生徒全員を我が要塞からあざ笑っていた。ご近所迷惑行為ギリギリの騒ぎを抑制・規則違反の監視のため目をギラつかせている生徒会本部に対してもまた然り。

 午前中は、自分たちの教室に用具を取りにくるクラスメイトが去り際に私に声をかけて行ったが、正午を超えたあたりから三階教室付近で人の気配を感じることはなくなった。薄情なものである。

 流石に孤独を感じたので、知り合いの所属する柔道部が営む「青春・熱々唐揚げ本店」に冷やかしがてら足を運んだのだが、その模擬店は店名のイメージを裏切ることなくむさ苦しい男達の巣窟と化しており、周囲の空気をその場で変化させていた。
 そんな光景を目にしたために、私の文化祭への曖昧な感情は「絶望」の一語で固まってしまったのである。「道着を着て大声上げる店員など居てたまるものか」と呟いて紙コップ一杯になった唐揚げをぶら下げ、重い足取りで我が要塞に撤退していったことはまだ記憶に新しい。
 
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