烏城の陽
 
祭りイベントの区切りを伝える笛がなる。

 午後になっても相変わらず「初夏」という言葉の許容範囲を超えた、太陽提供の炎天下一歩手前灼熱パーティーからは逃れられなかったが、意外とわが要塞、つまり教室における時間は快適であった。

 利き手の右手に握るPSPの画面を見れば、この日に備えて買っておいた、いわゆる「ギャルゲー」の登場人物である平面世界の乙女達が私の孤独を癒してくれ、腹が空けば朝コンビニで購入したサンドイッチと、先ほどまでむさ苦しい環境でせっせと揚げられていた唐揚げを口に放り、喉が乾けば水筒に淹れておいた麦茶を自分以外誰も存在しない空間で、腰に手を当て堂々とラッパ飲みをする。
 下の階や中庭で盛り上がっている、協力的な生徒とは違う形で、私も文化祭における「幸福」を確実に手にしていたのである。
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