烏城の陽
 しかし現実はやはり甘くはなかった。エデンを見つけた孤独なアダムはそのまま幸せを保ち続けることが許されないのである。

「私の栄光築かれるこの教室の素晴らしさが愚かな君たちにはわかるまい!」

 私が窓からそう叫んでやろうかと思っていた、ちょうどそのときに奴は廊下を歩いてこちらにズンズンと向かってきた。

 そして私の前でピタリと止まると満足げに笑みを浮かべたのだ。

 この男が私の草原の匂いが香る素晴らしき青春生活を、鬼が金棒を持って追いかけてくる生き地獄の生活に変化させる、堕ちたキューピッドであったことをこの時の私が知るはずがなかった。もし知ることができたならば、と悔やんでも過去は変えられないので仕方が無いが、タイムマシンと青狸の化け物が私の前に現れてくれるのならば、私は迷わずこの瞬間を選ぶだろう。

 このファーストコンタクトが私のすべてを変えたのであった。
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