純愛☆フライング―番外編―
「なんだってまた、手作り復活?」


すっきりシャープな目元、整った顔立ちの巽は女性にモテる。

調理師専門学校のパティシエコースに入り、ホテルのレストラン専属パティシエになって余計にモテはじめた。

志穂は巽がパティシエを目指し始めた翌年から、手作りチョコをやめにしたのだ。チョコだけじゃない。クリスマスやバースデーのたびに頑張って作ってきたケーキもやめた。

もともと志穂は不器用なほうで、何を作っても上手にできない。

優しい巽は、志穂がどんなものを作っても『サンキュ』と言って食べてくれた。

そして巽が専門学校に入った年、実習で作ったクリスマスケーキを持って帰って来たのだ。それは見事にデコレーションされた、市販のものと寸分変わらないブッシュ・ド・ノエル。


『コレは志穂が食う分。俺の分はちゃんとお前が作れよ』


そんな巽に、溶けてスライム状になった生クリームのケーキなんて、とても渡す勇気はなかった。

それが、志穂が中学1年のときのこと。



「ま、まあ、いいじゃない。ゼッタイに大丈夫! おいしいから、ねぇ食べて」


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