純愛☆フライング―番外編―
一緒に暮らし始めてすぐのこと。巽の誕生日に、志穂は頑張ってハンバーグを作った。バーていた。

でも巽からは、職場の仲間に飲み会に誘われた、と連絡が入り……朝まで帰って来なかったのだ。

それだけじゃない!


『若菜でーす! 昨夜はとっても楽しかった。巽のバースデーを一緒に過ごせて嬉しかったです。11月のあたしの誕生日も、ふたりで過ごそうね。ハッピーバースデー巽』


翌日、そんなメッセージが家の留守電ボタンを押すなり志穂の耳に飛び込んできて……。

11月にふたりが一緒に過ごしたのかどうかはわからない。ただ、恋人たちの定番――クリスマスは1日中仕事で、デートをする時間なんてなかったと思う。

でも、このままじゃ“妹みたいな存在”という宙ぶらりんのまま、志穂の一生は終わってしまう。

そして今回のバレンタインデー、志穂は発奮したのだ。

実を言えば1週間前から本当の手作りにチャレンジしてきた。でも、生チョコの壁は高くて厳しい。

レシピを調べて作ったものの、生クリームとチョコレートが分離してしまったり……。うまくいったと思ったのになかなか固まらず、丸2日冷蔵庫で冷やしてもトロトロだったり……。

そんなとき、目に留まったのが“バレンタイン専用手作りチョコレートキット”。


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