純愛☆フライング―番外編―
「当たりっていうから特等や1等だと思ったのに……」


志穂は面白くなさそうな顔をしてブツブツ文句を言う。


「あの人、大げさなんだよねぇ。なんか、たっちゃんにメチャクチャ愛想よかったし……。もう、見え見えって感じ」


おめでとうございます! と渡されたのは5等の入浴剤セット。 ポケットティッシュに比べたら文句は言えないけれど……。


「なーにが、カルディナールが大好き~よ。アレってさ、ゼッタイにたっちゃん目当てだよ。気をつけてね。あんな女にフラフラしたら許さないんだからっ!」


そんな志穂に一切答えず、巽は楽しそうにフライパンを見ている。

入浴剤セットを袋に入れてもらい、抽選会場を出たふたりは2階に上がってきたのだ。寝具や生活用品の辺りを目的もなくぶらついていた。


「やっぱりいいよな、ダイヤモンドコーティング。買っちゃおうかな……いや、でもネット通販のほうが」


などと独り言を繰り返している。

こうなったら巽は動かない。

昔からそうなのだ。布巾やタオルの前で吸水性が、とか。食器の前でアノ料理の映える色は、とか。言い始めたらずっとそれを見ている。


志穂は諦めて寝具のほうに移動した。


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