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story*1
「奈々ちゃん、どこ行くの?」
窓側に座っているあたしの可愛い息子、颯(はやて)が言った。
2才児には大きすぎる黄緑色のリュックを背負い、足をブラブラさせている。
黄緑色は颯の好きな色だ。
「ばあばのお家だよ」
あたしがそう答えると、颯は「ばあばのお家?」と繰り返し、一度だけまばたきをして、窓の外へ視線を移した。
颯が“ばあばのお家”と聞いても、ピンとこないのは当然だ。
彼はまだ一度も“ばあばのお家”、つまりあたしの実家に行ったことがない。
ばあばにも、1才になったばかりの時に会って以来会っていないから、もう1年と4ヵ月も会っていないことになる。