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「颯、寝ちゃったのか」
あたしの背中で眠る颯の寝顔を覗き込み、お兄ちゃんが言う。
あたしの肩に食い込む荷物をさらりと持ち上げると、車の方へ向かって歩き出した。
悲鳴をあげていた右肩がスーッとするのがわかった。
「お兄ちゃん、その格好で来たの?」
沈黙になるのがなんとなく恥ずかしくて、土木で鍛えられた広い背中にそう話し掛ける。
お兄ちゃんはハハッと軽く笑い、「当たり前だろ」と言った。
よく考えると、スウェットと作業着以外の服を着ているお兄ちゃんを見たことがない。
自分の質問がなんだかバカらしく思えた。