さくら一粒
毎度のことながら、自分の健気さがバカらしく思えて詩織は窓の外を眺めた。

電車で1時間、近くもなく中途半端な距離の先に怒りの矛先がある。

中距離恋愛。

会いたいと言ってすぐに会えなくもない距離。

でも明日の仕事に支障をきたすから動きたくない距離。

一番自分に甘くなってしまう距離?

それでも詩織は家のことは平日に済ませ、もちろん残業もせずに彼氏のもとに自ら会いに行くのだ。

こっちに来いと言わないだけマシだと思ってほしい。

それとも貴重な休みに押し掛けてくれるなと言いたいのだろうか。

「ムカつく。」

自分で勝手に考えを巡らせて怒りのボルテージを無駄にあげてしまった。

やきもきしてどうにも落ち着かない気持ちを和ます為にまた携帯を取り出す。

最近の携帯は本当に便利だ。

お気に入りの音楽を聞くためにイヤホンを繋いで操作をする。

その時に気付いた。

「メール?」

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