俺様☆キング
辛さも寂しさも嬉しさも…
【音子side】
放課後、光輝君に呼び出させれて3階の空き教室に来た。
話があるって言ってたけど、なんの話だろ…。まさか告白…そ、そんな訳無いよね…。だって私には…慧が…。慧は、もういないのに…私まだ…。
ふと外を見たら下校中のカップルが寒そうにしながらも手を繋いで帰ってる。
「慧…迎えに来てよ…私、ずっと待ってるんだよ? なんで来ないの…」
本音をこぼした事にハッと気付いたと同時に一筋の涙が頬を流れた。
やだ…なんで涙なんて…。急いで拭った。
ガラガラ…。
教室のドアが開いた。
あ、光輝君かな? そう思ったけど逆光でシルエットしか分からない。
「っ! 光輝君…? じゃないよね…誰…ですか…?」
不安に駆られて問いてみたけど返事がない。
「…え」
だんだん近づくシルエットに見覚えを感じた。顔を見る前に分かってしまった…慧だって。
「…な…んで」
「…及川に聞いたんだ」
嘘…光輝君が…!?
「…お前に話しがあって、ここに来た」
「…話?」
今更なんの話…って思ったけど私をまっすぐ見る慧の目が余りにも真剣だったから私も目を反らす事が出来なくなった。
「そう、話…」
「…私は話す事なんてない」
「お前に無くても俺にはある」
相変わらずの慧の口調に驚いてしまった。
…久しぶりに聞いた…その俺様な感じ。そう思うと目が潤んできた。
慧がゆっくり近づいてきて私の左手首を優しく掴んだ。
「…音子、あのな…」
「…っ!」
慧と目が合った瞬間、私の脳裏に乃亜ちゃんの何か企んだ笑みが浮かんだ。と同時に私の手首を掴んでいる慧の手を振り払った。
「…音子…!?」
「…やめてっ! 乃亜ちゃんいるくせに触らないでよ…」
「それは、あのな聞いてくれ音子…」
「いやっ! 聞きたくない!」
「音子っ…頼む…ッ!」
暴れ始めた私を慧は抱きしめた。
「いやっ! 乃亜ちゃんの事抱きしめた腕で抱きしめないでよ! 乃亜ちゃんの事好きなのに、こんな事しないでよっ!」
パシッ。
押しのけようとしただけなのに慧の頬を叩いてしまった。
「っ…」
慧は目線を下にしたまま私を責める事すらしなかった。
数分の沈黙を破ったのは慧だった。
「…音子、そんなに俺が許せないか…そんなに俺が嫌い…か」
視線は下のままの慧の横顔がとても切ない顔をしていた。
なんで…なんでそんな事…聞くの…。
「…俺は…お前に何をしたらいいか…分からない」
「…え」
慧がやっと視線をあげた。
そこには強気な慧の姿なんてどこにも無かった。とても弱々しい慧だった…。
「俺は…お前を散々傷付けた。別れを告げられて、冬休み明けに普通に笑ってる音子を見て辛いのは俺だけかって思ったら、全てどうでもよくなってた。だから音子を傷付けた。不本意であろうが傷付けたのは事実だ。本当に悪かった」
慧は深々と頭を下げた。
夕日で光る慧の金髪にやけに愛しさを感じて…触れてしまった。と同時に慧は驚いて顔だけ私の方に向けた。
「…音子…?」
「謝らないで…」
慧の頭から私は手を退けた。慧も姿勢を元に戻した。
「私が…慧をおかしくしちゃったんだから。ごめん…ね」
「お前のせいじゃねぇだろ…乃亜の仕業だろ」
「…え、なんで、その事…」
「聞いたんだよ及川に全て…」
「そっか、光輝君が…」
「その事もごめん!」
慧がまた深々と頭を下げた。
「なんで、慧が…!」
「乃亜は俺の元カノだった。今もずっと俺の事想ってたって知らなくて…音子にも迷惑かけた…だから…」
「いいっ!」
私は慧の言葉を遮った。
慧の口から慧と乃亜ちゃんの話なんて聞きたくないよ…。
「…音子」
「…もういいよ」
不覚にも涙が出てきてしまった。
過去の事がフラッシュバックして抑え切れなかった。
ギュッ。
慧が力強く抱きしめた。
「ごめん。辛かったよな…ずっと一人で」
ダメ…ここで甘えたら私は…慧の事忘れられなくなる。
「…は、離して…」
「離さない。悪いけど…離してやらない」
「…なんでよぉ…。期待なんてさせないでよ! 優しくしないでよ! 今までずっと一人で頑張ってきたの、こんな事されたら私…」
「悪いっ…一人でずっと、辛い時傍にいれなくて…。音子は俺の事嫌いでも俺は嫌いなんてなれねぇよ…」
「…え」
私の肩に雫が落ちてきた。もちろん雨なんて降ってない、雨漏りでもない。正解は…慧が抱きしめる手を緩めた時に分かった。慧の涙だった。
「…慧」
「…好きだ、音子」
「…」
「俺、お前がいないとダメになるんだよ。変わりなんていない、他の女でも同じだと思って乃亜と付き合ったが違った、俺にとってお前は特別なんだよ。お前がいる事で俺は強くなれる、お前がいないと俺は弱いクズだ。こんなにも誰かを愛おしいって思えたのは音子、お前だけだ」
止まっていた涙がまた溢れ出した。
そして慧が優しく拭ってくれた。
「…乃亜に理解して貰うのには、ちっと苦労したな」
そう言って慧が苦笑いを浮かべた。
「え」
「理解してくれたんだよ、俺の音子への気持ち。だから、もう心配すんな。アイツは何もしねぇよ」
「…そっか」
うかつにもホッとした顔をしてしまった。そんな瞬間を俺様は見逃す事無く…。
「てめぇに、もう選択肢はねぇよ。来いよ」
夕日をバックに慧は私に両手を広げている。私は迷い無く飛び込んだ。
何もかも受け止めてくれる大好きな腕の中。安心してまた涙が出てくる。
「…遅くなってごめんな」
「…ずっと一人で辛かったよぉ」
久々の慧の腕の中…ずっとずっと求めていた温もり、今その温もりは私だけ物。
慧に分かって貰えない、本当の気持ちを伝えられない痛さ、ずっと触れたくて手を伸ばしてしまいそうになった苦しさ寂しさ…全ての気持ちを込めて慧をより強く抱きしめた。
慧もまた、まるで私の全ての気持ちを悟った様に優しい顔して強く強く…抱きしめてくれたんだ。
「音子…」
慧は私の顎を軽く上げ今までで一番甘く優しく切ないキスをしてくれた。
放課後、光輝君に呼び出させれて3階の空き教室に来た。
話があるって言ってたけど、なんの話だろ…。まさか告白…そ、そんな訳無いよね…。だって私には…慧が…。慧は、もういないのに…私まだ…。
ふと外を見たら下校中のカップルが寒そうにしながらも手を繋いで帰ってる。
「慧…迎えに来てよ…私、ずっと待ってるんだよ? なんで来ないの…」
本音をこぼした事にハッと気付いたと同時に一筋の涙が頬を流れた。
やだ…なんで涙なんて…。急いで拭った。
ガラガラ…。
教室のドアが開いた。
あ、光輝君かな? そう思ったけど逆光でシルエットしか分からない。
「っ! 光輝君…? じゃないよね…誰…ですか…?」
不安に駆られて問いてみたけど返事がない。
「…え」
だんだん近づくシルエットに見覚えを感じた。顔を見る前に分かってしまった…慧だって。
「…な…んで」
「…及川に聞いたんだ」
嘘…光輝君が…!?
「…お前に話しがあって、ここに来た」
「…話?」
今更なんの話…って思ったけど私をまっすぐ見る慧の目が余りにも真剣だったから私も目を反らす事が出来なくなった。
「そう、話…」
「…私は話す事なんてない」
「お前に無くても俺にはある」
相変わらずの慧の口調に驚いてしまった。
…久しぶりに聞いた…その俺様な感じ。そう思うと目が潤んできた。
慧がゆっくり近づいてきて私の左手首を優しく掴んだ。
「…音子、あのな…」
「…っ!」
慧と目が合った瞬間、私の脳裏に乃亜ちゃんの何か企んだ笑みが浮かんだ。と同時に私の手首を掴んでいる慧の手を振り払った。
「…音子…!?」
「…やめてっ! 乃亜ちゃんいるくせに触らないでよ…」
「それは、あのな聞いてくれ音子…」
「いやっ! 聞きたくない!」
「音子っ…頼む…ッ!」
暴れ始めた私を慧は抱きしめた。
「いやっ! 乃亜ちゃんの事抱きしめた腕で抱きしめないでよ! 乃亜ちゃんの事好きなのに、こんな事しないでよっ!」
パシッ。
押しのけようとしただけなのに慧の頬を叩いてしまった。
「っ…」
慧は目線を下にしたまま私を責める事すらしなかった。
数分の沈黙を破ったのは慧だった。
「…音子、そんなに俺が許せないか…そんなに俺が嫌い…か」
視線は下のままの慧の横顔がとても切ない顔をしていた。
なんで…なんでそんな事…聞くの…。
「…俺は…お前に何をしたらいいか…分からない」
「…え」
慧がやっと視線をあげた。
そこには強気な慧の姿なんてどこにも無かった。とても弱々しい慧だった…。
「俺は…お前を散々傷付けた。別れを告げられて、冬休み明けに普通に笑ってる音子を見て辛いのは俺だけかって思ったら、全てどうでもよくなってた。だから音子を傷付けた。不本意であろうが傷付けたのは事実だ。本当に悪かった」
慧は深々と頭を下げた。
夕日で光る慧の金髪にやけに愛しさを感じて…触れてしまった。と同時に慧は驚いて顔だけ私の方に向けた。
「…音子…?」
「謝らないで…」
慧の頭から私は手を退けた。慧も姿勢を元に戻した。
「私が…慧をおかしくしちゃったんだから。ごめん…ね」
「お前のせいじゃねぇだろ…乃亜の仕業だろ」
「…え、なんで、その事…」
「聞いたんだよ及川に全て…」
「そっか、光輝君が…」
「その事もごめん!」
慧がまた深々と頭を下げた。
「なんで、慧が…!」
「乃亜は俺の元カノだった。今もずっと俺の事想ってたって知らなくて…音子にも迷惑かけた…だから…」
「いいっ!」
私は慧の言葉を遮った。
慧の口から慧と乃亜ちゃんの話なんて聞きたくないよ…。
「…音子」
「…もういいよ」
不覚にも涙が出てきてしまった。
過去の事がフラッシュバックして抑え切れなかった。
ギュッ。
慧が力強く抱きしめた。
「ごめん。辛かったよな…ずっと一人で」
ダメ…ここで甘えたら私は…慧の事忘れられなくなる。
「…は、離して…」
「離さない。悪いけど…離してやらない」
「…なんでよぉ…。期待なんてさせないでよ! 優しくしないでよ! 今までずっと一人で頑張ってきたの、こんな事されたら私…」
「悪いっ…一人でずっと、辛い時傍にいれなくて…。音子は俺の事嫌いでも俺は嫌いなんてなれねぇよ…」
「…え」
私の肩に雫が落ちてきた。もちろん雨なんて降ってない、雨漏りでもない。正解は…慧が抱きしめる手を緩めた時に分かった。慧の涙だった。
「…慧」
「…好きだ、音子」
「…」
「俺、お前がいないとダメになるんだよ。変わりなんていない、他の女でも同じだと思って乃亜と付き合ったが違った、俺にとってお前は特別なんだよ。お前がいる事で俺は強くなれる、お前がいないと俺は弱いクズだ。こんなにも誰かを愛おしいって思えたのは音子、お前だけだ」
止まっていた涙がまた溢れ出した。
そして慧が優しく拭ってくれた。
「…乃亜に理解して貰うのには、ちっと苦労したな」
そう言って慧が苦笑いを浮かべた。
「え」
「理解してくれたんだよ、俺の音子への気持ち。だから、もう心配すんな。アイツは何もしねぇよ」
「…そっか」
うかつにもホッとした顔をしてしまった。そんな瞬間を俺様は見逃す事無く…。
「てめぇに、もう選択肢はねぇよ。来いよ」
夕日をバックに慧は私に両手を広げている。私は迷い無く飛び込んだ。
何もかも受け止めてくれる大好きな腕の中。安心してまた涙が出てくる。
「…遅くなってごめんな」
「…ずっと一人で辛かったよぉ」
久々の慧の腕の中…ずっとずっと求めていた温もり、今その温もりは私だけ物。
慧に分かって貰えない、本当の気持ちを伝えられない痛さ、ずっと触れたくて手を伸ばしてしまいそうになった苦しさ寂しさ…全ての気持ちを込めて慧をより強く抱きしめた。
慧もまた、まるで私の全ての気持ちを悟った様に優しい顔して強く強く…抱きしめてくれたんだ。
「音子…」
慧は私の顎を軽く上げ今までで一番甘く優しく切ないキスをしてくれた。