俺様☆キング

届かない想い

【慧side】

 初めてだった。こんなにも人を好きになったのは…。今までにも付き合ったヤツはいたが全て女から告られて付き合った形が多い。
 だけど今回は俺の方から口説いた。遊びで何回か女を口説いた事はある。大抵の女はころっと落ちるが音子は違う。何度も何度も口説いても落ちなかった。

「で? お目当ての女子は及川光輝ってヤツと付き合いたいと言ってんの?」
「あぁ…」
「ありゃりゃ…そりゃ大変」
「あぁー! どうすりゃ振り向くんだよ!」

 俺はいたって本気だ。なのにアイツは「冗談」と言って片づける。

「及川光輝ねぇ…」
「んだよ」
「実はさ…結構遊んでるって聞いたんだよ」
「マジかよっ!?」

 って事は…音子が告ってオッケー貰ったら遊びって事か…? 音子はその事を知ってるのか…?

「おいっ! 慧っ!」

 俺は教室から飛び出した。アイツが他のヤツのものになるもの許さねぇけど…遊ばれるのは余計許さねぇ!

「音子っ!」
「っ!! えっ何で!?」

 ガシッ。
 俺は音子の腕を掴んで、いつもの屋上へ連れて行った。

「何するのっ!?」
「お前、アイツに告ったのか」
「なっ何で、そんな事…」
「良いから答えろっ!」
「何で、アンタに言わなくちゃいけないの!」

 相変わらずの音子に俺はイライラしていた。

「答えろ!!」

 俺は音子を壁に追い詰めた。

 ガンッ。
 屋上のドアが開いた。

「何してんの? 榎田」
「あぁ? 失せろ」
「アンタが失せなよ」
「はぁ?」
「こ、光輝君! あたし光輝君に話がっ…」
「おい、音子止めろ!」

 音子は俺の横を通り過ぎ及川の所へ駆け寄った。

「あたしね…実は…」
「止めろって言ってんだろっ!」
「光輝君の事が好きなの! だから付き合って欲しいんだ!」

 頼む、及川断ってくれ! ただただ、それを願っている俺を初めてカッコ悪いと思った。

「ほんと!? 嬉しいなぁ。俺で良ければ付き合おう!」

 絶望的だ…。願いは儚い。

「俺の勝ちのようだな、榎田」
「…っ」
「行こう束岡」
「うん♪」

 及川は音子の肩を抱きながら屋上を出た。

「…くそっ」

 止められなかった。情けねぇ…。このまま音子が遊ばれるのを黙って見てる場合じゃねぇ。

「おいおい調子見に来たら、このありさまかよ」
「うるせぇ!!!」
「おっとっと荒れてるな…」

 女一人も止める事も出来ねぇなんて俺も落ちたな。笑える…。

「…ハハ」
「ど、どうしたんだよ」
「許さねぇ…」
「け、慧?」
「ぜってぇ、音子を俺のものにしてやる」

 俺は及川の存在が自分のプライドを傷つけた。意地で音子を手に入れたいと思った訳じゃなくてマジで音子が欲しい…。
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