俺様☆キング
「…着いたよ」
「っ!!」

 その建物には『hotel』と書いてあって、建物自体はピンクだった。

「これって…」
「さぁ、行こう」

 光輝君は、私の腕をぐいぐい引っ張った。

「ちょ、ちょっと待ってよっ…!」
「えっ?」
「まだ…早いって言うか、心の準備が出来てないの…」

 だって、まだ付き合って1ヵ月も経ってないもん。

「ちっ…そっかごめんな、俺、早すぎたな」

 今一瞬光輝君が舌うちした気が…?

「あ、うん。こっちこそ、ごめんね?」
「いや…大丈夫、俺今日は帰るわ」
「あ、うん。バイバイ」
「じゃあな」

 私達は気まずいままバイバイした。

 -次の日-

 私は昨日の事が気掛かりで光輝君に謝ろうと光輝君を探してた。
 光輝君は教室にも屋上にも裏庭にもいなかった。

「どこに行ったの?」

 その時、3階の階段の近くの死角のとこに光輝君らしき茶髪の髪が見えた。

「あ! こうきく…」

 その時私が目にしたのは光輝君と2年の先輩がキスをしている所だった。

「ん? あなたは1年生?」

 先輩が、私に気付いてしまった。
 それと同時に光輝君が振りかえった。驚いた表情をしていた。
 私は足が言う事聞かなかった。

「先輩…ごめん。教室戻ってて」
「えぇ~何で?」
「後で行くから」
「…浮気しないでよ~」
「大丈夫っす。先輩だけだから」
「うふふ、ありがと、後でね」

 光輝君は、こそこそ話したつもりだっただろうけど私には、はっきりとスローモーションの様に聞こえた。

 ただ立ち尽くしてる私に光輝君が近づいてきた。

「束岡…これはな違くて、俺と先輩はイヤらしい事してたんじゃなくて、ただスキンシップを取っていたって感じで…」

 私は光輝君の言葉が全然理解出来なくて、さっき見た光景が何回も頭の中を浮かびあがっては消えを繰り返してる。

「だから俺と先輩は何も無いんだよ。俺には束岡しかいないんだから。俺を信じてくれ」

 『先輩だけだから』と言ってた光輝君が私に向かって『俺には束岡しかいないんだから』って言ってる事や、まんまと嘘にハマっている自分や、騙した人に恋をしていた事が一遍に圧し掛かってきて私は涙を流さずにはいられなかった。

「な、泣くなよ。誤解させる事して悪かった…」

 そう言って私に触れようとした瞬間、後ろから手が伸びてきて光輝君の手を掴んだ。後ろを振り返ったら慧がいた。

「やっと化けの皮が剥がれたな及川」
「榎田っ…」
「コイツは俺の女だ、触んじゃねぇよ!」

 慧は私をひょいっと持ち上げてお姫様抱っこした。

「おいっ! 待てよ!」

 私は慧の腕の中で顔を手で覆いながら泣いていた。
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