俺様☆キング
 しばらくしたらガラガラとドアを開ける音がした。この音は屋上のドアの音じゃない。
 私は少し手を下げて周りを見てみたら保健室だった。先生もいなかった。
 慧は私を一番奥のベッドへ降ろした。私は、まだ涙が止まらなかった。座ったまま下を向いていた。
 その時、目の前を慧の腕が伸びてきて私の頭に手を当て自分の左肩に私の頭を乗せた。

「…ごめん、ね?」
「あぁ…」
「私が慧の言う事、を…素直に聞いてれ、ば…こんな事には…ならなかった、のに…私バカだね…」

 慧は優しい。いつもなら怒鳴り散らしてるのに今日は私の話を文句も言わずに聞いてくれる。どうして私は初めから慧を素直に好きにならなかったのだろう。
 私は慧にヒドい事ばかり言っていたのに慧は、そんな可愛くない私をずっと好きでいてくれた。優しい慧に溺れていくのかな?

「所でお前、アイツとシたのか?」
「えっ…シ、シてないからっ!!!」
「ほんとか!?」
「当たり前じゃんか!!」
「良かった~。お前に手を出したら及川を殴りつけてやろうと思ってた」

 この人は私の事をいつも気にかけてくれる。例え些細な事でも…。何で、こんなにも…。

「何で…」
「は?」
「何で、いつもいつも私の事を気にかけてくれる訳? 冗談なら本当に止めて…」

 そう…慧を好きになる前に。慧も光輝君と同じように、ただ私を弄ぶんじゃないかって心の隅で思っていた。

「そんなのお前が好きだからだよ」
「っ!!」
「今まで俺の想いを冗談で片づけられて、どんだけ傷ついたか知ってんのか?」

 本気…。本当に慧は私を好き。そう思うと、何故か涙が溢れてきた。

「音子、好きだ。今度こそ俺の女になれ」

 そのまま私は慧とキスをした。優しくて甘くて、まるでチョコレートみたい。
 強引で所々優しくて私をいつも守ってくれる、そんな慧に私は溺れていったんだ…。
< 8 / 28 >

この作品をシェア

pagetop