恋愛の条件
「うん……ほら、服だって着替えなきゃ……」

「何も言わずに帰るつもりだった?」

「だって、気持ちよさそうに寝てたし、起こしちゃ悪いかなって……」

「それだけ?」

修一の落ち着いた声がひどく切なく薄暗いベッドルームに響く。

「………」

「奈央?」

「現実逃避、かな?」

奈央はふふ、と笑う。それがどこか切なく、泣きそうな顔をしている。

「わかってるわよ。別に何も言わなくていいから。昨日のことはお互い忘れよ?」

「はぁ?お前何言ってんの?」

「うん、仕事にも支障が出るし。もう、こういうことするのはやっぱ他の部署の子の方が面倒くさくなくていいのに」

奈央は自分自身に言い聞かせるように言う。

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