恋愛の条件
6.募る想い
「おはよ~ございます」

元気良い若い男性社員の声がフロアに響く。

「おはよう、五十嵐君。ごめん、そこの資料とって?」

「あ、はいっ」

オフィスに入るなり五十嵐の目に飛び込んできたのは、ジャケットを脱ぎ、腕まくりをして書類整理をしている奈央の姿だった。

「あ、あの……」

「何?」

「いえ、何時に出社されたんですか?」

五十嵐はきれいに片付いたデスクや書類棚を見渡し、恐る恐る尋ねる。

本来であれば、後輩である五十嵐や佐野がすべき仕事である。

「そんなに早くないわよ。8時よ。」

「すみません、広瀬さんにそんなことまでさせて……」

「いいのよ、私がした方が早いし。あなたたち、エリア分析がまだあるでしょ?」

「はい、そうでした……」

だから気にしないで、と項垂れる五十嵐に奈央はにっこり笑いかける。

その笑顔に五十嵐の頬が一気に赤く染まった。

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