恋愛の条件
(何でそんな目で見るの?冷たい態度を取ったかと思えば、優しく人の名前を呼んだり……今もあんな風にかばってくれたりして……)


「ずるい……」


奈央は小さく呟いた。

奈央の意図していることをわかっているのだろうか、修一は優しく笑い頬に軽く唇をあてる。

修一の唇が異動し奈央のそれに触れそうになった時、ガチャっとドアが開いた。

一瞬呆然とした五十嵐が、持っていたペットボトルを落とす。

「い、五十嵐君///」

奈央は、ばっと修一から身体を離す。

「あっ……すみません、俺邪魔するつもりは……」

しどろもどろにペットボトルを拾う五十嵐に修一はすんなり答える。

「ほんっとに、間の悪いヤツ。邪魔すんなよ?せっかく広瀬さん口説いてたのに……」

「///チーフ!!」

奈央が真っ赤な顔で修一のことばを遮る。

「五十嵐君、気にしなくていいからね。あっ、水ありがとう」

五十嵐からペットボトルを受け取り、いや取り上げ、奈央は足早にミーティングルームを後にした。

「じゃぁ、俺も山内課長とブリーフィングがあるから、五十嵐、プロジェクターの片付けよろしく~」

五十嵐は、何事もなかったように手をひらひらさせて部屋を出ていく修一の背中をポカンと見送るしかなかった。


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