恋愛の条件
午後になっても考え込むばかりで、５時近くになり、奈央は修一が戻ってくる前に帰ろう、と席を立った。

「五十嵐君、今日ちょっと用事があって定時で帰りたいんだ。後お願いしてもいい？」

「ダメですよ！」

五十嵐は、奈央の決意をあっさりと両断した。

「もうすぐでお二人共帰ってくるのに。その後すぐに海外開発部の歓迎会をするそうですよ？」

「え？今になって？」

「何か、さっき急に決まったらしいです。引っ越しや、サイバーマイクロ社の件があってずっとできなかったじゃないですか？」

「そうだけど、何も今日じゃなくても…急に言われても困るわ」

五十嵐が決めたことじゃないのは分かっていたが、つい奈央の口調は咎めるようになる。

「多分、黒沢チーフ達成功したんじゃないですかね？その祝賀会も兼ねてるんですよ」

「そうなの？」

全員強制参加ですよ、そう言って五十嵐は参加者リストの回覧板に奈央の名前を書いた。


（ヤダ、出たくない……何でよりにもよって……）


奈央は肩を落とし、自分のデスクに戻った。

一度シャットダウンしたパソコンを起動させ、何か自分を集中させる仕事はないかと考える。

その時、もうすぐ空港から修一と片桐を乗せたタクシーが着くと連絡が入り、奈央の心は大きく揺れた。


（今日は会いたくない……）


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