恋愛の条件
(な、何なのっ!?すっごい自分勝手!!私が自分のものだってまるで確信しているような……。信じらんないっ!!)


奈央は割れたネイルチップを拾い、ドアへと投げつけた。

そんなことをしても怒りは治まらないのに、そしてそのチップを拾うのも自分なのに。


奈央は本来鈍感な方ではない。

どちらかというと異性からの感情には敏感な方だった。

ただ、3年前の心の傷が奈央の心にヴェールをかけ、真実を見えなくしていた。

だから修一の想いも、彼から発せられた言葉の意味も誤解して受け取ってしまうのだった。


奈央は大きく溜息をつきながらネイルを直した。

いつまで自分はこんなことを繰り返しているのだろうか。

中身は全然成長していないのに、外見ばかり取り繕う。

呼吸をするたびにドキドキさせられて、触れられるだけで身体が熱くなる。

大嫌いと思いたいのに、いざ冷たくされると、悲しくて簡単に傷ついてしまう。

そんな自分が情けなくて惨めで嫌になる。


(ああ、もうっ!チップが上手くくっついてくれないっ!涙でぼやけてよく見えない……)


くるくる変わるネイルチップのように、自分の心に刻まれた修一への感情も記憶も全て捨て去って、新しいものへと替えてしまえたらどんなに楽なんだろうか。

だが、中々上手くつかないチップが、そんな簡単には替えられない、と言っているようだった。


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