恋愛の条件
10.消せない想い
奈央は待ち合わせ場所の料亭で片桐を待った。

これでいい、これで私は前に進める、と何度も自分に言い聞かせた。

後悔はしない、と。

10分ほどぼんやり考え事をしていると、個室の襖が開き、店員に案内された片桐が入ってきた。

「待たせた?」

「いいえ……」

外は雨が降っていたのだろうか、片桐の髪が少し濡れていた。

「びっくりしました。個室予約してあるなんて」

「ここ、商談でよく使うんだ。落ちついて話もできるし」

だからって、高級懐石料理って、と言いかけて言葉を呑んだ。



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